ワキガの原因

犯人はアポクリン腺から出る分泌物と常在菌

1 アポクリン腺とその役目

ワキ男
僕、最近ワキのニオイが少し気になるんですけど・・・

みんながこっちを見てる気がして会社で仕事してても落ち着かないんです・・

ごんぞう
それはもしかしたらワキガかもしれませんね。

ワキガの原因はアポクリン腺から出る汗です。

汗腺

皮膚の下の構造

本来、この汗は無臭です。

ところが、皮膚に常在する細菌によって分解され、発酵臭を出します。

これがあの何とも不快なニオイの正体です。

 

ニオイも皆同じではありません。表現のしかたはいろいろあります。

「牛乳、鉛筆、酸っぱい、塩素臭、硫黄臭、スパイス、コーヒー」などさまざまです。

 

全身に約400万ある汗腺のうち、約100万がアポクリン腺です。

主にワキや性器周辺に存在しています。

その主な役目は「ニオイのある成分を体外へ分泌すること」です。

 

人間以外の動物は、仲間の識別や縄張りの確保、異性に対するフェロモンとしてニオイを発しています。

現在の人間には必要のない機能です。しかし、大昔の原始時代には必要でした。

進化の過程で弱くなったものの、今も残る体の構造なのです。

 

アポクリン腺から分泌される汗の成分には、たんぱく質、脂質、糖質、アンモニア、

鉄分などがあり、これらは栄養分が豊富なため常在菌が繁殖しやすくなります。

繁殖が多くなれば、それだけ栄養分の分解も活発になるので結果としてニオイを発しやすくなるのです。

ごんぞう
「毛深い人は体臭がある」そんなイメージを持ってるでしょ?
ワキ男
ううう・・そうかも・・(僕も・・ちょっと・・)

それは決して迷信ではなく、根拠があります。

体毛は雑菌が繁殖しやすい場所ですから、汗が臭うメカニズムに当てはまるのです。

女性がワキのムダ毛を処理するのは美容面だけでなく、ニオイを抑えるのにも理にかなっているわけですね。

 

食べ物がワキガに影響するのは食べた物の成分によって分泌する汗の成分も変わるからです。

ワキガのニオイにさまざまな種類があるのは下記のような理由だったのです。

日本化粧品技術者会誌の論文によると

1「腋臭は個人差が大きいことがわかった」

2「臭気の差は微量成分の違いによると考えられた」

3「腋臭症患者のアポクリン腺中には鉄が多く存在する」

4「鉄の量が多いと腋臭が強い傾向にある」

参考:体臭発生機構の解析とその対処 (1)

このことからも食べたものが体臭に影響を与えていることがわかると思います。

 

またニオイは汗の量に比例しますので、夏場が一番気になるシーズンです。

アポクリン腺が多い人は汗も多くなるのでワキガの確立も高くなってしまいます。

 

夏になると制汗剤などの宣伝が多くなりますよね?

あれこそ汗の量がニオイのキツさを強くすることを裏付けています。

ワキ以外にもアポクリン腺が多いところはニオイが出やすいです。

たとえば、乳輪や陰部付近です(すそわきが)と言います。

アポクリン腺の量には個人差があります。生まれつきなので変わることはありません。

それは手術をするしかないのですが、手術にはいろいろなリスクも伴います。

ごんぞう

ここまでの話を簡単にまとめると

ワキガの原因はアポクリン腺から出る汗が皮膚に常在している細菌に分解されて起こるもの。

 

そうすると、自然に対処法が見えてきましたね? 

1 食べ物による分泌物のコントロール

2 肌をキレイに保つ(洗浄殺菌・制汗)

 以上、2つの点がワキガを改善させるのに効果的な方法です。

 

2 エクリン腺とその役目

エクリン腺は全身に約400万ある汗腺のうち約300万を占めています。

アポクリン腺の汗は毛穴から出るのに対してエクリン腺の汗は皮膚から直接出ます。

 

ほぼ全身に通っていて、その役目は体温の調節や緊張したときなどの精神発汗、

そして食べ物が熱かったり辛かったりなどの味覚的発汗です。

 

エクリン汗の99%は水分で、残りは塩分やアミノ酸、尿酸などです。

こちらも本来は無臭です。

しかし、汗腺の機能が鈍くなると、水分と一緒にミネラルも排出します。

 

そうすると、ミネラルの影響で皮膚の表面をアルカリ性にしてしまい、その環境下では常在菌が繁殖しやすいくなります。そして汗の分解が起こるとニオイを発します。

 

ごんぞう
これがいわゆる「汗クサイ」と言われるやつで、

アポクリン汗の「ワキガ臭」とはちがうニオイです

1日着たTシャツのニオイを嗅ぐと、ワキ部分は特有なニオイなのに対して、その他は臭ってもその種類がちがいます。
これは汗の出どころ(2種類の汗腺)と成分がちがうからだというのはもうおわかりでしょう。

エクリン汗はアポクリン汗のようなニオイはしません。

しかし、こちらもアポクリン汗同様に、汗に混ざる成分によってはニオイがきつくなります。

「剣道部の部室」みたいなニオイになりますのでご注意を。

 

ごんぞう
やっぱり食事と肌の清潔さ(洗う・殺菌・制汗)が

ニオイを防ぐカギになるんですよ。

 

3 皮脂腺もニオイの敵

ごんぞう
汗のほかにも厄介な「ニオイの材料」があるんだよ
ワキ男
え~!まだあるんですか?・・・

2つの汗腺から出る2種類の汗(アポクリン汗・エクリン汗)の他に

もうひとつニオイの原因になっているものがあります。

それは皮脂腺から分泌される「皮脂」です。

その役目は油脂成分を分泌して肌に潤いを与えることです。

皮脂も体から出た直後は無臭です。

しかし、汗同様、常在菌に分解されることによってニオイを発します。

これがアポクリン汗とエクリン汗のニオイをさらに強くしてしまう働きをするのです。

4 遺伝も関係する

ワキ男
ワキガは遺伝だから治らないって聞いたことがあるんですけどホントですか?
ごんぞう

確かに遺伝するけど、だから臭うってわけじゃないよ

ちょっと誤解してる人が多いみたいだね

ワキガ体質は遺伝によって親から子へ受け継がれる場合があります。

顕性遺伝(優性遺伝)と言って、両親のどちらか一方だけがワキガ体質であっても、

遺伝する可能性が高い特性があります。

 

片方の親がワキガ体質の場合、遺伝の確率は50%以上、

両方の親ともの場合は80%以上になります。

欧米人には「体臭がキツイ人が多い」という印象をお持ちですか?

欧米では実に80%以上の人がワキガ体質です。

 

これだけ多いことから、欧米ではワキガは誰でもある当たり前の生理現象として認識されていて、あまり問題にはなりません。ちなみに欧米人の耳垢はほぼ100%の人が軟耳垢です。

 

古くから肉などニオイの材料となる食べ物を好んできたため、アポクリン腺が発達しています。

その体質が遺伝として受け継がれてきました。

そしてそのアポクリン腺を発達させた食習慣は今も続いています。

ニオイを出しやすい体質に加え、ニオイを出しやすい食習慣がニオイを発生させているのです。

一方、モンゴロイドという人種に属している日本人は、昔から肉をあまり食べなかったこともあって、ワギガ体質の人は10%程度です。

ですから大多数とは違う「異常」という認識があります。

そのためニオイは不快とされ敬遠されているのです。

日本人で軟耳垢の人は15%程度で、欧米人と比べてはるかに少ないことがわかります。

「ワキガは日本ではマイナー」だったのです。

こうしてマイナーなワキガ体質の人は、他の人にはないニオイを発していることに悩むのです。

 

これはあくまで個人的な印象になりますが、ある特定の人種の人たちはかなりニオイがキツイと感じます。

私が住んでいる地域では、特定地域からの観光客が多く、グループで買い物をしている姿をよく見かけます。

90%ぐらいの確率で5メートルぐらい先から「これ以上近づくのはやめよう」と思うほどのスパイスの効いたニオイが鼻に突き刺さります。(もちろん個人差はあるでしょう)

これも長きに渡って続いたその地域の食習慣がアポクリン腺を発達させ、親から子へと受け継がれてきたのでしょう。

 

ごんぞう
だいたいわかったかな?
んーん。。結局ワキガ体質の人はワキガってことですか?

「ワキガ体質」とは、アポクリン腺が発達していることです。

ワキガ体質であることが、直接不快なニオイを出しているという意味ではありません。

その可能性が一般の人よりも起こりやすい要素があるというだけです。

 

ここまで読んでいただいた方は、もうワキガの原因をおわかりだと思います。

原因は、汗(分泌物)が常在菌に分解されるためにでるニオイです。

 

もう一度思い出して!

1 汗に含まれる成分、すなわち、食べたものの影響が出るということです。

これは食生活のコントロールで改善できます。

2 常在菌による汗の分解。

これは体をよく洗い、殺菌して清潔に保てば改善できます。

ごんぞう
これまでの話をまとめましょう

ワキガ体質の持ち主=ワキガではありません

 

アポクリン腺が発達している体質であっても、ニオイのメカニズムを知っていれば、

食べ物と肌のお手入れでニオイを発生させない、あるいは極力おさえることはできるのです。